キャロルのフロントブレーキキャリパーのオーバーホールを実施しました。
キャリパーのオーバーホールは、なんか車弄ってるぞって感じがして結構好きな作業です。
私はスイフト(HT51)の14インチのブレーキユニットを流用していますが、フローティング式(片持ち)の1ポットキャリパーであればどの車種でもオーバーホール手順はさほど変わらないと思います。
もともとフローティングキャリパーはヒューマンエラーが起き難いように単純な部品構成になっているし、ラインの繋ぎ部分やピストンシール部分を確実にやっておけば大きな問題は起きないと思います。
まずはジャッキアップしてウマを掛けます。ウマはロアアームの付け根に辺りに掛けます。
タイヤを外し、その後キャリパーを外します。画像は運転席側フロントのブレーキです。
これからの作業は左右並行して行います。
ハンドルを切って外側に向けると作業が楽になります。まずはショックに繋がっているブレーキホースを外します。
凹形の金具でショックに留まっているだけなのでマイナスドライバーなんかで叩くと簡単に外れます。
私のはブレーキ流用に伴い適当な車種のブレーキホースを流用しているのでタイラップで留めているだけです(汗)
ちなみに純正より数センチ長いホースです。
キャリパー取り付け部分の裏側です。
赤丸のボルト2本でキャリパーボディとキャリパーサポートが繋がっています。
ボルトは14のコマで外せます。このボルトはスライドピンに繋がっており、スライドピンが円滑に動くことによりキャリパーボディ全体がスライド移動することができます。
紫丸のボルトはブレーキラインの締結ボルト、14のコマで外せます。この部分はキャリパーの形式によって異なるケースもあります。私のやつはバンジョーボルトで留めているタイプです。シールワッシャが上下各1枚付いています。
黄色丸のボルトはキャリパーアッシーとナックルの締結ボルトです。17のコマで外せます.ここのボルトはブレーキの減速力を全て受ける所なので、かなりトルク掛かっており外すのが大変です。(私は電動インパクトで外しましたが…)
この時点で色々なやり方があると思いますが、私は最初に赤丸のボルトを外しました。(今回はブレーキホースも交換するつもりの手順でやりました。結果的にブレーキホースが短くて交換はできませんでしたが)
赤丸のボルトを外すとキャリパーボディが外せます。ブレーキホースに負担が掛からないように、キャリパーボディをなにか適当な台の上に置いておきます。(とりあえずスタビライザーの上に引っ掛けておいても可)
その後、黄色丸のボルトを外すとキャリパーサポートが外せます。
キャリパーを外したらローターを外せるようになります。
ローターは固着していなければ引っ張れば外せますが、外れない場合はローターのサービスホール(M8の並目の穴があります)にボルトをねじ込む事により外します。
サービスホールは錆びている場合が大半なので、CRCをバンバン吹いておいた方がいいでしょう。
次にキャリパーボディを適当な箱の中に置きます。フルードが漏れるので汚さないためです。
外したサポートです。パッドは取り外しています。
トルク受けの金具を外してナイロンブラシなどで汚れを落とします。トルク受けの金具は軽く叩くとキャリパーサポートから外れます。
その後、灯油を使って汚れを落としますが、この時点でなるべく汚れを落としておいた方が灯油の汚れ量も少なく済みます。
⚠️金具はあまり強くこすると変形する危険があるので注意が必要です。
スライドピン&ブーツ部分です。
⚠️ブーツは上下があるので交換する際は注意が必要です。
スライドピンを引っ張るとブーツごと『スポッ』と抜けてきます。
ここが固着しているようなキャリパーだとかなりの重症です。キャリパーが片方しか仕事していない事になるので、理屈だと半分の制動力しかない事になります。
しかもキャリパーピストン側のパッドしか減らないので、パッドの磨耗も外から確認しただけでは良く分かないケースがあります。
気付いたらピストン側のパッドだけ裏金まで磨耗していた…なんてケースもあるようです。
キャリパーボディの方ですが箱に入れた状態でブレーキペダルをバンバン踏むとピストンが段々飛び出してきます。
更に踏むとピストンが外れます。
ブレーキべダルをバンバン踏むとマスターシリンダーのブレーキフルードが無くなってしまうので、画像の様にブレーキフルードの缶ごと逆さまにしてタンクにブッ込みましょう。
大気圧が掛かるので溢れて漏れる事はありません。
フルードは軽自動車だったら1000ccあれば十分です。
※車上で左右両方のピストンが外れなかった場合(片側だけしか外れなかった場合)は外れなかったキャリパーを取り外してエアーを掛けて取り外しましょう。
エアーを送り込むのは自転車タイヤの空気入れがお勧めです。
⚠️エアーで押し出す場合はかなりの勢いでピストンが飛び出すので、指や手を挟まないように注意が必要です!
また飛び出した勢いでピストンを傷つけないようにウエスや週刊誌等で保護しておきましょう。
車体側からブレーキホースを取り外すときの画像です。
フレアナットレンチを使います。モンキー等の二面幅のレンチでも外れなくは無いでしょうが、かなりのトルクが掛かっているのでお勧めしません。
この部分はナメてしまったら最悪なので、必ずフレアナットレンチを使いましょう。無い場合は買うか借りるかしましょう。フレナットレンチのサイズは10です。
車体側に固定しているステーはかなり貧弱なので、力任せにトルクを掛けるとステーが変形してしまう可能性があります。
ステーを支えながらトルクを掛けた方が良いと思います。
⚠️手を挟まないように注意!
ブレーキホースを交換しない場合は必要無い工程です。
外したキャリパーを分解して洗浄します。
洗浄には水を使うとすぐに錆びてしまうので、灯油を使います。ブレーキクリーナーを使ってもいいでしょう。(すぐに乾燥してしまうのであまり効率は良くないですが…)
灯油で漬け置きしながら、ナイロンブラシでガシガシ擦るとみるみる綺麗になっていきます。
綺麗になったらよく脱脂して、お好みで色なんかを塗るのもいいと思います。
⚠️キャリパ取付面、シリンダー内面等に塗料が付かないように注意しましょう。
キャリパ組立で一番の難関はピストンブーツの組込みでしょう。
スズキの小排気量車用フローティングキャリパはブーツリングの無いタイプなので、ピストンブーツを組込んでからピストンを挿入するのが楽です。
ピストン組付けの際は、シリコングリスをピストンとピストンブーツ全体に薄く塗ってから、キャリパーにエアーを送り込むとブーツが捲れ上がって『ズボッ』という感じでハマります。
エアーを送るのに自転車タイヤ用の空気入れを使う場合は3人ぐらいでやればかなり楽ですが、頑張れば一人でもできます。
画像は一人でやる場合の空気入れチューブ固定方法
工程の手順としては、
①ピストンシール組み付け
②ピストンブーツ組み付け
③ピストン挿入
シール、ブーツ、ピストンには全体に薄くシリコングリスを塗っておきましょう。
⚠️シールとブーツのゴム材質はSBR若しくはEPDMなので、モリブデン系(鉱物油系)グリスを使ってはいけません。ゴムの劣化が促進されてしまいます。
キャリパーを塗装&組付け後です。
私はオーバーホールキット付属のラバーグリスは使用せずに画像のシリコン系グリスを使用しました。
純正のラバーグリスはコスト重視の安いモノなので、耐久性、耐熱性に劣ります。
もちろん通常使用であれば問題無いものですが…
スライドピンブーツ部分です。
ブーツ内部にはグリスを充填させますが、過剰にグリスを入れすぎるとかえってスライドピンの動きが悪くなるので適量にした方がいいでしょう。
ここだけオーバーホールするだけでも大分変わりますよ。
その後、オーバーホールしたキャリパを装着して、エア抜きして終了です。
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ローター摺動面にも色を塗ってますが、パッドと擦れて直ぐに消えてしまいます。
ちなみに一人でエア抜きするには適当な油差しにホースを繋いで、ブレーキペダルをガシガシ踏むとできます。ホースを繋ぐ前に油差しを潰しておして軽い負圧が掛かるようにしておきます。
要はフルードが逆流しない程度の負圧を掛けておけばいいだけです。また、ブリーダ部分やホース差込部分に高粘度のグリスを塗っておくとエアーが漏れなくなるのでやりやすいと思います。
以上、端折ってしまった部分もありますが、大まかなキャリパーオーバーホールの作業工程になります。
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