1980年に記録された銀の史上最高値の背景には、アメリカのハント兄弟(ネルソン・バンカー・ハント、ウィリアム・ハーバート・ハントら)が大規模な銀の買い占めを行ったことが大きく関係しています。

1970年代後半、兄弟は石油事業で得た資金を使い、銀相場が当時あまりに低いと考え、銀の現物と先物を大量に買い占め始めました。
1979年から1980年初頭にかけ、彼らは世界の銀供給量のおよそ3分の1を保有したと見られ、その買いが銀価格を激しく押し上げました。
具体的には1979年1月の6ドル台から1980年1月にはトロイオンスあたり50ドル超にまで価格が跳ね上がり、これが713%という極めて異例の高騰をもたらしました。
この背景には1970年代後半のアメリカの高インフレ、ドル価値の不安定化、そして金の価格が高騰しすぎていたことへの反動もあります。
兄弟は銀が金に比べて安すぎると考え、金銀比価で本来の価値に戻るべきと見て買い進めたのです。
当時の市場はレバレッジによる信用取引も盛んで、彼らは借金をして巨額の銀を買いました。
しかし、この買い占めは市場に過度の負担と混乱をもたらし、1980年3月27日の「銀の木曜日」と呼ばれる日には、銀価格が急落し始め、わずか数日で半値以下に落ち込む暴落が起きました。

この時、米商品取引所がレバレッジ制限などのルール変更を行い、兄弟は巨額の追加保証金を求められましたが資金不足に陥り、総額10億ドル以上の損失を被りました。
最終的に兄弟一家は破産申告に至り、この件はテキサス史上最大級の破産事件としても知られています。
この事件の結果として、銀価格はその後10ドル前後にまで急落し、銀の市場は長期間にわたり不安定な状態が続きました。
また、兄弟の買い占めに対する民事訴訟も起こり、多くの一般投資家が大きな損失を被りました。
一方でこの事件が市場に与えた教訓を受けて、商品市場におけるレバレッジ取引の規制強化や市場操作対策が進むきっかけとなりました。
現在においても、この1980年のハント兄弟の銀買い占めとそれに伴う価格の極端な高騰と暴落は、銀市場の歴史的なエピソードとして語り継がれており、銀価格のボラティリティと市場リスクの象徴となっています。
最近の銀価格の高騰も一部では当時の買い占めを想起させるほどの動きを見せており、インフレや市場の需給状況に非常に影響を与える要因となっています。
要点まとめ:
- ハント兄弟は1979年から1980年にかけて大量の銀(市場の約3分の1)を買い占め、価格を大幅に吊り上げた。
- これにより銀価格は約6ドルから50ドル超に急騰(713%上昇)。
- 1980年3月の規制強化に伴う価格暴落、「銀の木曜日」を引き起こし、巨額の損失と破産へ。
- 市場のレバレッジ規制強化の教訓と銀市場の長期不安定化のきっかけ。
- 現代の銀市場の価格変動にも影響が続いている。
以上、参考になりましたら幸いです!
コメント