銀価格が高騰する真の理由:金とは違う「副産物」の宿命と、EV・太陽光発電の衝撃

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近年、銀の地金価格が再び上昇し、投資家の間で大きな話題となっています。

「安全資産」としての金に追随しているだけではない、銀固有の、そしてより深刻な需給の逼迫が背景にあります。

​今回は、なぜ銀の価格がここまで高騰しているのか、その「供給不足と需給バランス逼迫」の構造的なメカニズムを分かりやすく解説します。

​💎 セクション1:金とは違う!銀の供給が抱える「宿命」

​銀の価格変動を理解する上で、まず知っておくべきは、銀の採掘方法の特殊性です。

​金(ゴールド)はそれ自体が目的で採掘されますが、銀の供給はまったく異なります。

​🚨 7割以上が「副産物」という名の制約

​実は、世界で流通している銀の供給量の約7割〜8割は、銀を主目的とした採掘によるものではありません。

銅、鉛、亜鉛などの産業用金属(ベースメタル)を採掘する際、たまたま一緒に産出される「副産物」として銀が手に入っているのです。

  • 増産が難しい理由:
    • ​銀の価格がいくら急騰しても、「銀だけ」のために鉱山会社が採掘量を増やすことは困難です。
    • ​増産を決定するには、主産物である銅や鉛の市場価格、需要、採掘コスト、環境規制などを総合的に考慮する必要があり、非常に複雑です。
    • ​つまり、銀の供給量は、銀市場の都合だけでは決まらないという、構造的に硬直した問題を抱えています。

​この「供給が硬直的で増やせない」という点が、需要増に直面した際の価格高騰の最大の原因となります。

​⚡ セクション2:需要を爆発させる「グリーン革命」の波

​供給が頭打ちになる中で、銀に対する需要は急速かつ構造的に増加しています。

その中心にあるのが、世界的な脱炭素化の動き、すなわちグリーン革命です。

​1. 🌞 太陽光発電(PV)の電極に不可欠

​銀は、すべての金属の中で最も高い電気伝導性を持つため、エレクトロニクス産業で欠かせません。

中でも、太陽光パネルの需要増が銀市場を直撃しています。

  • ​太陽光パネルの発電セル(光を電気に変える部分)に使われる電極材には、銀ペーストが不可欠です。
  • ​各国が再生可能エネルギー導入目標を掲げる中、PVパネルの生産は世界中で爆発的に伸びており、これは長期的に継続すると見込まれる銀の基礎需要となっています。

​2. 🚗 EVシフトも需要の押し上げ役に

​電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)には、従来のガソリン車よりもはるかに多くの電子部品やセンサーが搭載されています。

これらの複雑な電子機器のコネクタや接点にも、銀が大量に使用されています。

​📈 セクション3:構造的な逼迫が生む「高騰の連鎖」

​「増やせない供給」と「構造的に増える需要」がぶつかり合った結果、市場ではどのような現象が起こるのでしょうか?

​1. 現物在庫(地金)の急速な減少

​工業用途の需要が旺盛な上に、インフレや地政学的リスクを嫌った投資家も「安全資産」として銀の現物や関連ETFを買い集めます。

  • ​工業需要でギリギリだった供給に、投資需要が上乗せされることで、国際的な市場(ロンドンやニューヨークなど)の現物(地金)の在庫が急速に減少します。

​2. 「品薄感」からの価格スクイーズ

​市場に出回る流動性の高い在庫が薄くなると、トレーダーや原材料を確保したい産業界に強い「品薄感」が広がります。

​この状況下では、「とにかく現物を手に入れたい」という買い手が優先され、多少の価格上昇は気にせず買い注文を入れるため、銀の価格は急激に跳ね上がりやすくなります(これを価格のスクイーズと呼ぶこともあります)。

​💡 まとめ:銀価格は「産業の未来」を映す鏡

​このように、近年の銀価格の上昇は、単なる金利やインフレの動きだけでなく、「脱炭素化という産業の大きな波」「銀の副産物という供給の宿命」が組み合わさって生まれた、構造的な需給逼迫によるものです。

​銀は、もはや単なる宝飾品や投資対象ではなく、未来のテクノロジーとエネルギーを支える不可欠な産業原料となっているのです。

以上、参考になりましたら幸いです!

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