日本の貨幣における「メルティングポイント」とは、貨幣を構成している金属素材の市場価値が、その貨幣の額面価値を超える瞬間、またはその状態を指します。
これは貨幣が持つ本来の「お金としての価値」と、物理的な「地金(素材)としての価値」を比べることで生じる現象です。
例えば、銅や銀などの金属価格が高騰し続けると、貨幣そのものを溶かして素材として売却するほうが得になることから、「メルティングポイントを超える」と表現されます。
メルティングポイントの実例
- かつて日本で流通していた銀貨の100円玉は、銀の価格高騰によって素材価値が額面の100円を超えたため廃止されました。
これは典型的な「メルティングポイント超え」の例です。 - 世界的に見ても、金貨・銀貨などでは現代の地金価格が額面を大きく上回るため、額面以上の価値がついているケースが少なくありません。
現行日本貨幣の具体状況(2025年)
貨幣種 | 主な素材・重量 | 素材価値(市場価格) | メルティングポイント超過状況 |
---|---|---|---|
1円玉 | アルミ(約1g) | 約0.37円 | 超えていない |
5円玉 | 銅・亜鉛(約3.75g) | 約5.25円(銅2.6g×銅価+亜鉛1.15g×亜鉛価) | わずかに超過 |
10円玉 | 銅(約4.5g, 95%) | 約6.2円(銅の市場価格1.2円/g換算) | 超えていない(ただし銅価高騰で接近中) |
50円玉 | 白銅(約4g, 銅75%・ニッケル25%) | 10円未満(素材価値は額面の50円を大きく下回る) | 超えていない |
- 1円玉はアルミ製で、現在のアルミ市場価格から計算すると額面の三分の一ほどの素材価値しかありません。
したがってメルティングポイントは超えていません。 - 5円玉は2025年時点では銅・亜鉛の単価上昇により、貨幣の素材価値が額面の5円をわずかに上回っています。
これはまさにメルティングポイントを超えていると言えます。 - 10円玉は銅価格の高騰で素材価値が近づいているものの、現状まだ10円の額面価値を超えるには至っていません。
近い将来超える可能性はありますが、現時点では銅価格があと1.5倍上昇しない限り達しません。 - 50円玉は現在主流の白銅(主成分:銅・ニッケル)の安定した市場価格によって額面価値に遠く及ばない素材価値となっています。

メルティングポイント超えの意味と注意点
メルティングポイントを超えると、貨幣が日常の取引手段としてではなく、「溶かして素材として売却する資産」として扱われることが生じます。
メルティングポイント超過が続けば、素材に使われる金属の不足や流通貨幣の変動、市場で貨幣が消失する現象などを生みます。
歴史的にはこれが通貨制度や貨幣素材変更、デジタルマネー導入などの流れにつながることもあります。
また、日本の現行貨幣を「溶かしたり解体したりして地金として販売すること」は法律で禁止されているため、素材価値が額面価値を超えていたとしても自由に溶かして売却できるわけではありません。
まとめ
日本におけるメルティングポイントとは、貨幣の材質となる金属価値が市場の高騰で額面を超えてしまう状況を指します。
現在の市況では1円玉・50円玉はメルティングポイントを超えておらず、10円玉は接近中、5円玉はわずかに超過しています。
貨幣素材と市場価格が常に連動するため、今後も金属価格の推移次第でメルティングポイント超過貨幣が増える可能性があります。
以上、参考になりましたら幸いです!
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