最近、貴金属市場で「銀(シルバー)」の存在感が一段と増しているのをご存知でしょうか。
価格の上昇率が、あのビットコインやゴールドを凌駕する局面も見られるほどです。
銀の価格高騰の背景として、よく語られるのは「EV(電気自動車)」や「太陽光発電」といったクリーンエネルギー需要です。もちろん、それも大きな要因です。
しかし、水面下で銀の現物を猛烈に吸収し続けている、もう一つの「秘密」があることをご存知でしょうか?
それは、「軍需産業」です。
今回は、一般の投資メディアではあまり語られない「銀と戦争」の衝撃的な関係について深掘りしていきます。
1. 現代兵器は「銀の塊」?目に見えない需要の急拡大
「ミサイルに銀?」「戦車にシルバー?」と疑問に思うかもしれません。
かつての戦争が「鉄と火薬」のぶつかり合いだったのに対し、現代の兵器は、高度な電子機器と精密な制御システムで動く「ハイテクの結晶」です。
そして、そのハイテクを支えるのに不可欠なのが、地球上の全金属の中で最高の電気伝導性を持つ「銀」なのです。
具体的にどこに使われているのか
- 精密誘導ミサイル: 目標を正確に追尾するためのレーダー、センサー、中枢制御システム。
- ドローン: 偵察、攻撃、通信を担う無人機の心臓部。
- レーダー・電子戦システム: 敵をいち早く探知し、通信を妨害するための複雑な電子回路。
- 暗号化通信機器: 軍事機密を保護するための高度な通信デバイス。
これらの最先端兵器には、膨大な量の銀が組み込まれています。例えば、巡航ミサイル1基には数百オンス(数キログラム)もの銀が使用されると言われています。
そして、最大の特徴は「一度使われたら再利用されない」という点です。着弾とともに銀は散乱し、リサイクル不可能な形で消費されます。つまり、需要は「究極の使い捨て」なのです。
2. 貨幣史に刻まれた「ウォータイム・ニッケル」の教訓
銀が戦略物資として徴用されたのは、今に始まったことではありません。コインコレクターの間で有名な「ウォータイム・ニッケル」がその好例です。
第二次世界大戦中の1942年から1945年、アメリカ政府は戦車や航空機の装甲に必要な「ニッケル」を軍需に回すため、5セント硬貨の素材からニッケルを排除しました。その代わりに使用されたのが「銀」でした。
当時のアメリカにとって、銀は「ニッケルの代わり」を務められるほど重要な戦略リザーブだったのです。現代ではその立場が逆転し、「銀そのものが、他の何物にも代えがたい精密兵器のパーツ」として徴用されているのです。
3. 「国防支出の増大」が銀価格を押し上げる秘密兵器に
世界の軍事費は2024年に過去最高を記録し、2025年、2026年にかけてもその勢いは止まる気配がありません。
地政学的リスクの高まりを受け、欧米やアジアの諸国が「老朽化した兵器の更新」と「先端弾薬の備蓄」を加速させているからです。
これまで、銀の価格は「工業需要」と「投資需要」が主なドライバーだと考えられてきました。しかし今、そこに「戦略的国防需要」という、極めて強固で継続的な要素が加わりました。
国家の防衛に関わる需要は、景気後退局面でも削られることがないため、銀価格にとって非常に強力な下支え(ボトム)となります。
4. ゴールドとの決定的な違い:国家安全保障の「必需品」
金(ゴールド)も地政学リスクで買われますが、銀と金には決定的な違いがあります。
- 金(ゴールド): 主に「価値の保存」という金融資産としての側面が強い。
- 銀(シルバー): 「産業の米」であり、かつ「国防の要」である実需側面が強い。
一部の国では、銀を「重要鉱物(クリティカル・ミネラル)」に指定する動きも見られています。銀がなければ、最新のミサイルもドローンも作れず、国の守りが疎かになるからです。
つまり、銀は単なる投資対象ではなく、国家の存立に関わる「必需品」としての価値が高まっているのです。
まとめ:2026年以降も「銀の戦略的価値」に注目
今後、脱炭素社会に向けた「工業需要」と、地政学リスクに伴う「軍事需要」という二つの巨大なエンジンが、銀の現物を奪い合う構図が続くと予想されます。
一方で、銀の供給は新規鉱山の開発が難しく、副産物としての産出が多いため、急激な増産ができません。
この「需要爆発 vs 供給限界」の構図に「国防」という聖域の需要が加わった今、銀は世界情勢に裏打ちされた極めて重要な戦略的資産となりました。
あなたが手元に持っているその銀貨やシルバーバーは、数年後には「自由に所有することが難しい戦略物資」になっているかもしれません。2026年以降も、この「知られざる銀の顔」から目が離せそうにありません。
以上、参考になりましたら幸いです!

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