日本企業の賞与制度廃止は増えているのか?
近年、日本の大手企業を中心に「賞与(ボーナス)の廃止」や「賞与の給与化」に踏み切る動きが少しずつ広がっています。
たとえばソニーグループは2025年度から冬の賞与を廃止し、その分を基本給や夏の賞与に組み込む改革を実施。
また大和ハウス、バンダイなども同様の動きに乗り出しています。
大手53社の調査によると、「賞与給与化」を実施済みまたは決定しているのは一部にとどまりますが、今後この傾向が広がる可能性が示唆されています。
企業側のメリット・デメリット
メリット
- 人件費管理がしやすい
賞与を給与に組み込むことで、毎月の人件費を安定して把握しやすくなります。 - 採用競争力の強化
月給(基本給)を増やすことで、新卒や中途採用でのアピールポイントとなり、人材獲得が有利に。 - キャッシュフローの安定
賞与支給の時期に一時的な資金流出が発生しにくくなり、キャッシュフロー管理が効率化。 - 社会保険料の算定業務が一本化
賞与ごとの社会保険料計算や事務処理の負担を減らすことが可能。 - 評価制度の柔軟化
月給に一本化することで、インセンティブや成果主義に基づく報酬設計への移行がしやすくなる。
デメリット
- 年功序列や成果主義のメリハリの減少
ボーナスは従業員の努力や業績への貢献度を年2回反映できるが、その機会が減少。 - 柔軟な人件費コントロールの制限
会社業績が悪化しても、月給として固定化された分の削減は簡単ではない。 - 従業員の離職タイミングのコントロールが難化
賞与前後での退職管理など、賞与支給が一定の歯止めになっていた側面が弱まる。
従業員側のメリット・デメリット
メリット
- 収入の安定化
毎月安定した額の給与が支給されることで、生活設計がしやすくなる。 - 将来見通しの明確化
業績連動で大きく変動するリスクが減り、毎年の年収が予測しやすくなる。 - 住宅ローンなどローン審査への有利さ
安定した月収が評価され、住宅ローンや各種ローン審査で有利になりやすい。
デメリット
- 業績や貢献への還元を感じにくくなる
目に見えて「臨時収入」としてボーナスをもらう喜びや、成果が反映された実感が減る。 - 一時的な資金不足リスク
大きな資金が必要な時期(夏冬)の臨時収入がなくなることで、急な出費に備えにくい。 - 賞与を目的にした退職抑制効果の減少
賞与後に辞める従業員が集中するなどの動きがなくなり、逆に企業側が人材流出コントロールをしにくくなる。
まとめ
日本企業で賞与制度の廃止や賞与の給与化は確実に進行中ですが、現時点では大手企業を中心とした限定的な動きです。
企業・従業員双方で「安定」と「変動」のバランスをどう取るかが、大きなテーマになっています。
時代に合わせて自社に最適な制度を設計し、従業員への説明と合意形成が非常に重要なポイントといえるでしょう。
以上、参考になりましたら幸いです!
コメント