ロジウムとはどんな金属か
ロジウム(Rhodium, 元素記号Rh, 原子番号45)は、非常に希少で高価な貴金属です。
銀白色で硬く、腐食に極めて強い性質を持ち、プラチナ族元素(PGM)の一つに分類されます。
主な性質
- 色・外観:銀白色で非常に光沢があり、反射率も高い
- 硬度:モース硬度6.0、ビッカース硬度1246 MN/m²と高い
- 密度:12.45 g/cm³
- 融点:1964°C
- 耐食性:酸や塩基にも強く、酸化しにくい
- 電気・熱伝導性:良好
- 化学的安定性:多くの環境で化学的に安定
採掘の歴史と地政学的な問題
歴史
ロジウムは1803年、イギリスの科学者ウィリアム・ハイド・ウォラストンによって発見されました。
もともと南米産のプラチナ鉱石から分離された非常に希少な元素です。
20世紀初頭までは用途が限られていましたが、自動車の排ガス浄化装置(触媒コンバーター)での需要増加により、重要性が飛躍的に高まりました。
主な産出国と地政学リスク
- 産出国:南アフリカが世界の約8割を産出、次いでロシア
- 地政学的リスク:南アフリカでは政情不安や労働争議、鉱山の操業停止などが供給不安を招きやすい。
ロシアもウクライナ戦争などの影響で供給に不確実性があるため、価格が大きく変動しやすい。
工業利用
ロジウムの最大用途は自動車の排ガス浄化用触媒で、世界需要の約8割以上を占めます。
その他にも以下のような用途があります。
- 自動車触媒:NOx(窒素酸化物)など有害ガスの分解
- 化学工業:酢酸や硝酸の製造触媒
- ガラス・光学産業:高温部品や光学部品のコーティング
- 宝飾品:ホワイトゴールドのメッキや装飾
- 電子部品:高耐久接点や反射鏡
ロジウムを使ったコイン
ロジウム製のコインやバーは存在しますが、非常に希少です。
主に投資用やコレクター向けとして、以下のようなものがあります。
- ロジウムコイン:世界で流通している純ロジウムコインはごくわずか(例:Baird & Co.製の1オンスコインなど)
- ロジウムバー:Luciteria、PAMP Suisse、Baird & Co.などが製造
- ロジウムメッキコイン:カナダ王室造幣局のブラックロジウムコイン(銀や金のコインにロジウムメッキを施したもの)
ロジウムの価格帯と今後の見通し
価格の推移と現状
- 2025年7月時点の価格:1グラムあたり約199ドル、1トロイオンスあたり5,600ドル前後
- 過去の価格変動:2021年には1オンス約29,890ドルの過去最高値を記録。その後大きく下落し、2023年には5,000ドル台まで下落、2025年は再び上昇傾向
価格変動要因
- 供給リスク:南アフリカやロシアの生産動向、労働争議、政情不安
- 需要動向:自動車産業の排ガス規制強化や電気自動車(EV)普及の影響
- 在庫水準:2025年は需給が逼迫し、在庫が40年ぶりの低水準に
今後の見通し
- 2025年は前年より8%程度の価格上昇が予想されており、特に供給面の不安定さから高値が続く可能性が高いとされています。
- ただし市場規模が小さく流動性も低いため、価格の乱高下が起こりやすい点には注意が必要です。
まとめ
- ロジウムは金よりも希少かつ高価な貴金属で、主に自動車の排ガス浄化装置に不可欠な素材です。
- コインやバーも存在しますが、流通量は極めて少なく、コレクターや投資家向けに限られています。
- 価格は非常に変動しやすく、地政学的リスクや自動車産業の動向が大きな影響を与えます。
- 今後も高値圏が続く見通しですが、需給バランスや世界情勢によって大きな変動リスクがあります。
ロジウムはその希少性と工業的重要性から、今後も注目される貴金属です。
以上、参考になりましたら幸いです!
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