「給料が上がらない」
「将来のことを考えると不安で、
結婚なんて選択肢に入らない」
そんな漠然とした生きづらさを
抱えていませんか?
かつて日本は、
国民の誰もが「自分は中流だ」と
信じて疑わなかった
「一億総中流社会」でした。
しかし、現在の日本はその面影を失い、
完全にくっきりと分断された
「階級社会」へと変貌を遂げています。
今回は、社会学者・橋本健二氏の
最新データ分析をベースに、
現代日本を覆う格差の正体と、
静かに、しかし確実に拡大している
新しい下層階級の実態、
そして私たちが直面している
日本の未来について、
分かりやすく解説していきます。
1. 日本の格差は「戻れないレベル」に達している
まず、現在の日本がどれほど不平等な
社会になっているかを数字で見てみましょう。
社会における所得分配の不平等さを
表す指標に「ジニ係数」があります。
これは所得の格差を0から1の間の
数値で表したものです。
「0」に近いほど格差がなく平等で、
「1」に近いほど1人がすべての富を
独占している(格差が最大)ことを意味します。
日本のジニ係数の推移を見てみると、
衝撃的な事実が浮かび上がります。
一億総中流と呼ばれ、
誰もが未来に希望を持てた1980年、
日本のジニ係数は「0.349」でした。
しかし、2020年にはこれが
「0.570」にまで跳ね上がっています。
これは格差が大幅に拡大し、
社会の分断が目に見えるレベルに
達していることを示しています。
高齢化によってリタイア層が増え、
収入の差が表面化しやすいという
背景はあるものの、この40年で
日本の社会構造はガラリと変わりました。
「持っている人は資産運用や不動産で
さらに富を増やし、
持っていない人は実質賃金が
下がり続けて苦しいまま」
この格差の固定化こそが、
現在の日本を覆う生きづらさの正体です。
2. 現代日本を構成する「5つの階級」
橋本氏は、現在の日本社会は
以下の5つの階級に分断されていると
分析しています。
ピラミッドの最上位に位置するのは、
企業を所有・経営し、
最も高い富を持つ「経営者・役員」です。
そのすぐ下には、ITエンジニアや
医療関係、開発職、マネージャーなど、
正社員の中でも高い給与水準を得ている
「専門職・管理職」が続きます。
さらにその下には、販売やサービス、
事務などの現場で働く、一般的な
サラリーマン正社員の層である
「現場の社員」が位置しています。
そして、主に夫の正規収入に
生活を依存しているため、
独立した階級ではなくサラリーマン層の
隣に位置づけられる「パート主婦」。
最後が、このピラミッドの
最下層に位置する階級です。
パート主婦などを除いた、
「非正規労働者」だけで構成される 新しい下層階級「アンダークラス」。
いま、日本の最大の歪みとなっているのが、
この最下層に位置する
「アンダークラス」の存在です。
3. 約890万人。「アンダークラス」の衝撃的な実態
「非正規労働者」と聞くと、
世間一般では「若い男性のフリーターで、
そのうち正社員になる人でしょ?」と
思われがちです。
しかし、最新のデータが明かす実態は、
私たちのイメージを根底から覆します。
現在、日本国内のアンダークラスの
人口は約890万人。
その平均年収はわずか216万円、
月収に換算すると約18万円です。
これだけで単身生活を送るのは
非常に過酷ですが、さらに深刻なのは
その内訳です。
① 半数以上が「女性」である
アンダークラス全体の56.8%は
女性が占めています。
オフィスの派遣や契約社員といった
不安定な事務職、あるいはサービス業などで、
自立した生計を立てるのが極めて難しい
状況に置かれています。
② 中心層は「40代・50代の中高年」である
20代の若者は全体の2割にも満たず、
最も多いのは40代、次いで50代です。
これは、1990年代後半からの
「就職氷河期」に正社員になれなかった
人々が、一度も不安定な働き方から
抜け出せないまま年齢を重ねてしまった
結果です。
若い頃の社会のつまずきが、
何十年もの間、個人の人生を
縛り続けています。
③ 3人に1人以上が「大学を卒業している」
学歴別で見ると高卒が最も多いものの、
実は大卒以上の学歴を持つ人も 37.7%含まれています。
「大学を出ていれば一生安心」という
神話はすでに崩壊しています。
新卒時の不況や会社の倒産、
体調不良による離職など、
ほんの些細なきっかけで誰もが アンダークラスに転落するリスクを
孕んでいます。
4. 経済的困窮がもたらす「つながりの喪失」と「少子化の真因」
アンダークラスの抱える問題は、
単に「お金がない」という個人の
財布の事情に留まりません。
それは社会の根観を揺るがす
2つの大問題を引き起こしています。
深刻な「婚姻の壁」と次世代の消失
アンダークラスの男性の未婚率は
74.5%、女性も68.4%に達しています。
本書の中で非常に重い言葉で
指摘されているのが、
彼らに支払われている賃金には
「次の世代(子ども)を生み育てるための 費用(生産費用)」が一切含まれていない
という事実です。
本人がその日をギリギリ生きるためだけの
金額しか支払われていないため、
結婚や子育てを「最初から諦めざるを得ない」
のです。
日本の出生率低下の本質は、
ここにあります。
そして恐ろしいことに、
アンダークラスの人口は増え続けています。
なぜなら、中流家庭で生まれ育った
子どもたちが、成人後に正社員になれず、
上の階級からアンダークラスという名の
「あり地獄」へと次々に
飲み込まれ続けているからです。
3人に1人が「頼れる友人がいない」という孤立
お金がないことは、
人間関係の断絶を意味します。
友人と食事に行ったり、
趣味の集まりに参加したりする
余裕がないため、アンダークラスの
32%(およそ3人に1人)が 「頼りにできる友人が本当に1人もいない」
と回答しています。
この圧倒的な経済的困窮と
社会的孤立が重なることで、
全体の約2割がうつ病などの
心の病気の診断・治療を経験しているという
痛ましいデータも出ています。
5. 「自己責任論」という嘘と、暴走する資本主義
世間ではよく「貧しいのは本人の
努力が足りないからだ」
「自己責任だ」という冷淡な声が聞かれます。
しかし、著者はこれに対して
データで強く反論しています。
アンダークラスに属する人々の
背景を紐解くと、育った家庭環境の厳しさ
(親の経済力の弱さ、機能不全家族)、
学生時代のいじめや不登校など、
本人の努力ではどうにもならない 理不尽な要因によって、スタートラインから
差をつけられているケースが非常に多いのです。
いわゆる「親ガチャ」の格差が、
そのまま将来の階級を決定づけてしまっています。
さらに大きな原因は、
日本の資本主義の仕組みそのものが 変質したことにあります。
昔の資本主義(1980年代まで)は、
国や企業が労働者を「正社員」として
手厚く保護していました。
年功序列で給料を上げ、結婚して
子どもを育てられるだけの生活費を
会社が保障していたのです。
しかし、現代の資本主義(1990年代以降)は、
グローバル化の競争に勝つため、
企業は「コストカット」を最優先。
景気が悪くなればいつでもクビにでき、
ボーナスも不要な「非正規労働力」に
依存し始めました。
著者はこれを、
「現代の企業は、よその家庭が 莫大なコストをかけて大切に育ててくれた 子どもを、都合のいい使い捨ての 消耗品として利用し、 ボロボロになったらポイ捨てしている」
と痛烈に批判しています。
6. コロナ禍という「タイタニック号」で真っ先に海へ落とされた人々
この格差の非対称性が
最悪の形で証明されたのが、
記憶に新しい「コロナ禍」でした。
一見、日本中が同じように苦しんだ
災害のように思えましたが、その実態は
まさにタイタニック号の沈没と同じでした。
一等客室に相当する専門職・管理職・
正社員の人々は、セーフティーネットに
守られ、テレワークへ移行しました。
休業手当もあり、生活は維持されました。
一方で、三等客室に相当する
アンダークラスの非正規労働者たちは、
避難ボートすら与えられませんでした。
現場の最前線で働いていた派遣や
アルバイトの人々は、真っ先に
シフトを削られ、契約を打ち切られました。
十分な直接補償も届かず、
ダイレクトに生活が崩壊する極限状態に
真っ先に追い込まれたのです。
7. アンダークラスの救済は、富裕層にとっても「生き残りの条件」
この恐ろしい崩壊の連鎖を止めるために、
私たちはどうすればよいのでしょうか。
著者は以下の具体的なアプローチを
提示しています。
1つ目は、「自己責任論」を今すぐ捨てること。
理不尽なつまずきで苦しむ人々に対し、
社会全体が冷淡な目を向けるのをやめることです。
2つ目は、暴走する資本主義にブレーキをかけること。
経営者や大投資家といった「資本家階級」から
税金をしっかりと徴収し、その富を
労働者の生活を支える仕組み
(社会保障の強化など)へと再分配することです。
「増税をすれば優秀な人が海外へ逃げてしまう」
「リスクを取って成功した人から税金を取るのは不公平だ」
という反対意見もあるでしょう。
しかし、著者が最も強調したいのは、
「アンダークラスを放置することは、 社会全体の自死を意味する」という点です。
どれほど優れた経営者や投資家がいたとしても、実際に店舗を回し、製品を作り、荷物を運ぶといった「現場の労働者」がいなくなれば、社会のシステムは完全に停止します。
現場を支える最下層の人々が貧しさのあまり
子どもを諦め、上の階級から落ちてきた人々をも飲み込む底なしのあり地獄となっている現在。
このまま少子化が進めば、
最終的には日本の経済も社会も
内側からボロボロに崩壊します。
その時、最大の打撃を被るのは、
他ならぬ富裕層や経営者自身なのです。
したがって、アンダークラスを救うための
ルールの見直しや富の再分配は、
弱者救済という「綺麗事」ではありません。
「自分たちが属するこの日本という社会そのものを 生き残らせるための必須条件」なのです。
おわりに
私たちは誰もが、
明日は我が身かもしれない時代を生きています。
「自己責任」という言葉で
誰かを切り捨てる社会は、巡り巡って
自分自身の首を絞めることになります。
現代日本が直面している
「格差拡大の果て」の真実に目を向け、
社会全体の仕組みをどう変えていくべきか、
一人ひとりが真剣に考えるべき局面に、
私たちは立たされています。

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