パラジウムとは ― 基本的な性質
- パラジウム(Pd)は、白金族元素に属する銀白色の貴金属で、原子番号46。
- 軽量で柔らかく、延性や加工性に優れています。
- 融点は約1555℃、耐食性が高く、空気中でほとんど変色しません。
- 自身の体積の数百倍もの水素を吸収できる特性を持ち、水素関連技術や化学触媒分野で重宝されています。
パラジウムの主な工業用途
- 自動車の排ガス浄化装置(三元触媒)
ガソリン車の排ガスに含まれる有害物質を分解・除去するために不可欠。世界のパラジウム需要の6~8割を占めます。 - 電子部品
スマートフォンやコンピュータなどの回路基板に使用され、高い導電性と耐食性を活かしています。 - 水素吸蔵合金
水素を吸収・放出する能力を活かし、燃料電池や水素関連技術に利用されています。 - 化学触媒
製薬や化学合成プロセスで重要な役割を担っています。 - 医療・歯科分野
歯科用合金や医療機器、人工関節などに利用されます。 - 宝飾品、時計、航空宇宙産業
軽量で耐久性があるため、高級時計や装飾品、航空宇宙部品にも使われています。
世界的な需要・供給構造
- 主な産出国
ロシアと南アフリカが世界供給量の約80%を占め、特にロシアは約40%を担っています。 - 需要の中心
北米、中国、欧州、日本の順で需要が多く、特に中国は近年急増しています。 - 用途別需要割合
自動車排ガス浄化装置が最大、次いで宝飾用、電子部品、投資需要など。
世界情勢・地政学リスク
- ロシア・ウクライナ情勢
ロシアが主要供給国であるため、地政学リスクが高まると供給不安から価格が急騰しやすい傾向があります。 - 南アフリカの労働問題や採掘コスト
ストライキやコスト上昇も供給リスクの一因です。 - 環境規制の強化
世界的な環境規制強化で排ガス浄化装置向け需要が増加し、価格上昇要因となっています。 - EV(電気自動車)普及の影響
完全なEVへの移行が進むと、パラジウム需要は減少する可能性がありますが、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車では引き続き需要が見込まれます。
パラジウムの価格動向と今後の予測
- 過去の推移
近年は自動車排ガス規制強化や供給リスクから価格が大幅に上昇しましたが、2024年以降はやや調整局面に入っています。 - 短期~中期予測(2025年~2026年)
- 2025年の平均価格は前年末比でやや上昇(8.8%増)と予想されていますが、1,000ドルを下回る水準も見込まれています。
- 2026年にかけては、平均価格がやや下落傾向に転じるとの予測もあり、需給バランスが均衡に近づく見通しです。
- 長期展望
- EV普及が進むと自動車触媒向け需要が減少し、パラジウム価格も中長期的には調整される可能性が高いです。
- ただし、地政学リスクや新興国の自動車需要、電子機器分野の成長によっては再び上昇局面も想定されます。
年度 | 予想平均価格(ドル) | 備考 |
---|---|---|
2024年末 | 約909.8 | 2023年末比やや下落 |
2025年 | 約990 | 8.8%上昇予想、1,000ドル割れも |
2026年 | 900~1,000 | 需給均衡で横ばい~やや下落 |
まとめ ― 投資・実需の観点
- パラジウムは工業用途が圧倒的に多く、特に自動車産業の動向が価格を左右します。
- 供給の大半をロシア・南アフリカに依存しているため、地政学リスクや供給障害が価格変動の大きな要因です。
- 環境規制の強化や電子機器需要の拡大はプラス材料ですが、EV普及の進展は中長期的な需要減につながる可能性もあります。
- 短中期的には供給リスクや投資需要で価格が上振れする場面も予想されますが、長期的には需給均衡や需要構造の変化により調整局面も想定されます。
パラジウム市場は、世界情勢や産業構造の変化に敏感なため、常に最新の動向を注視することが重要です。
今後も地政学リスクや技術革新、環境政策の動向が価格に大きな影響を与えると考えられています。
以上、参考になりましたら幸いです!
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