近年、資産運用の王道としてゴールドが注目されていますが、今まさに歴史的な転換点を迎えているのがプラチナです。
2025年、プラチナは年初から11月末までに約90%という驚異的な上昇を記録しました。これは金の上昇率を上回る数字であり、単なる連れ高ではない独自の強気相場が形成されています。
なぜ今、プラチナがこれほどまでに買われているのか。そして2026年に向けてどのような展望が待っているのか。その背景にある中国の戦略と深刻な供給危機を詳しく解説します。
1. 中国が仕掛けるプラチナの戦略的備蓄
2025年の急騰において最大の原動力となったのは中国の買い付けです。
世界生産の約半分を飲み込む需要
プラチナの年間生産量は世界全体でわずか170トン程度です。ところが中国は、2025年10月までにその半分に近い約80トンを輸入しました。専門家がこれを国家備蓄的な動きと指摘するのは、中国がプラチナを次世代産業に不可欠な戦略物質と定義しているからです。
水素社会の覇権を握るための布石
最大の目的は、次世代エネルギーの柱となる水素戦略にあります。水素燃料電池や、水を電気分解して水素を作る装置において、プラチナは代わりのきかない最強の触媒です。2035年までに燃料電池車の大規模普及を掲げる中国にとって、プラチナを物理的に確保することは、将来のエネルギー主導権を握ることを意味しています。
2. EVシフトの鈍化と実需の復活
もう一つの強力な追い風が、自動車業界のトレンド変化です。
一時期は世界中で電気自動車(EV)への完全移行が叫ばれましたが、現在はハイブリッド車(HV)への回帰が進んでいます。EVにはプラチナが不要ですが、HV車の排ガス浄化装置には大量のプラチナが必要です。
EV化によって消えるはずだった実需が再び活性化したことで、需給バランスは一気に引き締まりました。この実需の強さが、2026年以降も価格を支える強固な土台となります。
3. 供給網の崩壊:掘れない、入ってこない、在庫もない
需要が激増する一方で、供給サイドは崩壊の危機に直面しています。
生産拠点の脆弱性
世界の供給の約7割を占める南アフリカでは、慢性的な電力不足や洪水、インフラの老朽化により生産が停滞しています。また、主要産出国であるロシアからの供給も不透明な状況が続いています。
底をつき始めた地上在庫
これまで不足分を補ってきた地上在庫も限界に近づいています。供給不足が4年以上続くという異例の事態の中で、掘り出すこともできず、蓄えもないという深刻なモノ不足が価格を押し上げる強烈なエネルギーとなっています。
4. 2026年の展望:金との格差を埋める逆襲
2026年のプラチナは、金との割安修正がさらに進むフェーズに入ると予測されます。
金が高騰しすぎたことで、投資家の資金は相対的に値頃感のあるプラチナへと流れ込み始めています。歴史的に見ればプラチナが金より高価だった時代は長く、現在の価格差は依然として歪みが生じている状態です。
2026年に欧米やアジアで水素プロジェクトが本格始動すれば、現物確保の争奪戦はさらに激化するでしょう。金が安定資産としての価値を示す一方で、プラチナは産業の根幹を支える戦略物質としての価値を爆発させる可能性があります。
参考:同じ貴金属である銀の動向
プラチナと同様に注目を集めているのが銀です。銀も工業需要の強さから、2025年11月までに約80%の上昇を記録しました。
銀の背景にあるのは太陽光パネルの需要増と、6年連続の供給不足による在庫の枯渇です。実需によるモノ不足という点ではプラチナと共通していますが、銀は個人投資家による投機的な動きも激しく、値動きが非常に荒いという特徴があります。
投資対象としてはプラチナが中長期の戦略的資産としての性格が強いのに対し、銀はより短期的なボラティリティが高い傾向にあるため、慎重な向き合い方が求められます。
まとめ:希少性の再発見が未来を拓く
2026年は、プラチナが金とは異なる独自の上昇ストーリーを完結させる年になるかもしれません。中国による国家レベルの買い、ハイブリッド車への回帰、そして修復困難な供給不足。
これらの要素が重なり合う今、プラチナの希少性が改めて再発見されています。資産形成の選択肢として、この白い貴金属が持つ戦略的価値を無視することはできないでしょう。
免責事項:本記事は情報紹介を目的としており、投資を勧誘するものではありません。投資は自己責任において行ってください。

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